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第53回 加工用トマトの地理学

こんにちは,家喜翔太郎です。

今回は僕が近頃気になっている,「地理学」についておもしろい内容を見つけたので,その魅力をお届けしたいと思います(うまく伝えられるかどうか分かりませんが)。

概要としては,加工用トマトと輸入の歴史を見ていくことでその時々で国内農業にどのような影響があったのか,加工企業はどのような戦略を取ってきたのかが分かる,ということについてみていこうと思います。

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目次

0.地理学とは?

1.加工用トマトとは?

2.「貿易・為替の自由化」「原料自由化」

 

0.地理学とは?

そもそも地理学って何ぞや。ぼくも定義が気になったので調べてみました。

地理学の定義は,

<地表空間における特定地域の自然,人文の諸事象を総合的に把握し,地域的特色を明らかにしようとする学問。>(ブリタニカ国際大百科事典より抜粋)

となっています。これだけだとわかりにくいので,具体例を見てみましょう。

<ex:キャンパスにいるいえきの状態について,地理学的観点より考える>

いえきの状態@キャンパス:だらける,寝ている,遊んでいる

岡山市で生活するよりも楽しいしリラックスできる

→休日にいく別荘のようなもの

真庭市内に幾ばくかのお金を落としている

 

具体例は以上です。今僕が例に示したように,<キャンパスにいえきがいる>ことについて,

・なぜいえきはそこにいるのか?

・どの程度の頻度であるか?また,それはなぜその頻度であるか?

...etc

といった,「なぜその事象がそこで起こっているのか」の要因を突き詰めていく学問が地理学なのです。これを農学と結び付けてみたものが今回のテーマです。

さてさて今回の本題に入る前に,もう一つのキーワード加工用トマトについて先に見ていきましょう。

1.加工用トマトとは?

トマトは商業的に二種類に分類することができます。一つが生食用トマト,そしてもう一つが加工用トマトです。

身近な違いだと,生食用トマトは普段我々がサラダなどに使うもの,加工用トマトはペーストやトマト缶といったことが挙げられます。

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↑加工用トマトの栽培環境。支柱がありません!

他にも栽培環境など多くの違いがありますが,今回重要なのは

販売先

です。

<販売先>

生食用:市場出荷,直売所など+契約栽培

加工用:完全契約栽培

という違いがあります。

なぜこの違いが今回重要であるかというと,

・輸入による影響を正確にとらえやすい

・加工企業の当時の戦略をとらえやすい

からです。このように言える理由を段階を踏んで見ていきましょう。

<ex:加工用トマトと輸入の関係>

①輸入制度が変更される

(海外産加工用トマトを安価に輸入できるようになる)

②加工企業は新制度に適した方針をとる

(国内産加工用トマトよりも,海外産のものを多く使用する)

③国内加工用トマト農家に影響が直に及ぶ

(買い取り量が減少したので,他品目への転換・離農)

このように,加工用トマトについて農家さん(生産者)と加工企業(販売者)が密接に関係しているため,加工企業の方針の変更が国内農家に強く影響するのです。

この点において,輸入化に関する国内農業への影響について,その他市場出荷がされる農産物よりもより正確な影響度合いをとらえることができるのです。うーん楽しくなってきましたね。

2.「貿易・為替の自由化」「原料自由化」

輸入化の歴史,といってもいくつかのターニングポイントがあります。全部について話していると長くなってしまうので今回は輸入について一番最初のターニングポイントとなる,

「貿易・為替の自由化」「原料自由化」

についてのみ見ていきます。

ときは1955年。ガットに日本が参加したことで,農産物についても国際化が進められました。それが,

1960年 「貿易・為替の自由化」「原料自由化」

です。

このときまで国内の加工企業は原材料を国内より調達していたのですが,原料自由化により「このままでは国内の生産力は低下するのでは」という懸念が国内農家で起こりました。

この懸念に対し,当時国内の生産量の実に61.2%を調達していた加工企業,カゴメが主導となり,「全国加工用トマト生産振興協議会」という組織が設立されました。

主な活動としては零細農家の保護を目的に輸入製品が国内に入ってこないように陳情書を政府に提出する,などを行っていたそうです。

しかしその努力も輸入自由化の進行を遅らせるにとどまり,

1972年 トマトピューレ・トマトペーストの輸入自由化

の制度が策定されました。

この制度により,カゴメをはじめ,加工企業は輸入量を増加させました。

いやいや,さっき「零細農家を保護する取り組みを加工企業が主体となって進めていっていた」って言っていたのに,輸入量を増加させるって矛盾してるじゃん。

おっしゃる通りです。実は加工企業は以下の理由で手のひら返しを行ったのです。

①原料費の削減

②海外調達地域の確立

①原料費の削減

1973年に日本経済に大きな影響を与えたオイルショック。実は農業にも多大な影響がありました。

加工用トマトも例外でなく,生産段階においてエネルギー費が高騰することにより,加工企業の買取価格が大幅に上昇しました。

1973~1975年の3年間で2.1倍にもなったそうです。

②海外調達地域の確立

突然輸入自由化が制定されたとしても,加工企業は一体どこの国・地域からトマトを調達すればよいのか分かりません。トマトの品質,値段,日本の消費者の選好,生産量などなど多くのことを考え,慎重に調達地域を選ぶ時間が必要だったのでしょう。

以上2つの理由より,加工企業は零細農家を保護する目的で輸入化反対組織を設立することを建前とし,輸入自由化に向けて方針を変え,その準備をしていた,と言われています。うーんちょっと怖いですね。

このあとにも,

 1980年代 「生産調整」

1989年 「製品自由化」

といったターニングポイントがあります。このあたりは今回はカットさせていただくのですが,こっちの方がデータもたくさん手に入りますし,より地理学地理学していますので,気になる方はぜひ調べてみてください!

次回予告

次回は牧さんです。好物はトマトだとか。