ゆーまにわリレーブログ

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第17回 後楽園の木材から「ひび割れ木材は構造的にホントに弱いか?」を考えてみる

こんにちは。
ゆーまにわで日野上事業部を担当しているくせに,ここ数週間日野上に行けておらず,日野上ロスに陥っている家喜翔太郎です。

そばも天ぷらも食べたいし,天気のいい日に行って屋外席でダラダラしたい。

麦とろご飯もいいですねえ。なんだか雲上亭の宣伝になりそうなのでこの辺りでこの話は切って,タイトル通りの本題に移りたいと思います。

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目次

1.序論と経緯

2.なぜ木材は割れるのか?

3.割れる木材,割れない木材

4.ひび割れ木材は弱いか?

 

1.序論と経緯

【状況】

・家喜@後楽園の流店にて夕涼み(ここ好きなんです。涼しいし,水流の音が落ち着くので。)

・外国人観光客+通訳+ガイドが近くで歩みを止める

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 ↑後楽園内の「流店」という場所です

 

【経緯】

観光客「dbほdcccんぢぃおいx?」(全然聞き取れなかったので適当なものです)

通訳「なんでこの木材にはひびが入っているんですか?」

ガイド「割れたり,壊れないようにするためじゃで」

関係ない家喜「??? ひび割れあった方が壊れやすいのでは?

関係ない家喜「よく分からないから,調べてブログのネタにしよ。」

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↑ひび割れ木材。木材建築物では度々見かけますね。

 

・・・というわけで,調べてきたので今回は

【ひび割れ木材は構造的に弱いか?】

という話をしていきたいと思います。

この問題を考えるためには以下の情報が必要となります。

・なぜ木材は割れるのか?

・ひび割れる木材,割れない木材

・木材の強度の定義

順を追って見ていきましょう。

<基本単語>

*乾燥によるひび割れ=干割れ

 

2.なぜ木材は割れるのか?

木材の割れる原因,それは

【木材の内側と外側の乾燥速度が異なる】

からです。

 

実は,木材の内部構造はおおまかに二つに分類されます。

 

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↑はイメージ図

上の写真のように,木材の内部は

・中心の赤みがかった部分(赤身と呼ばれます)

・外側の白みがかった部分(白太と呼ばれます)

の二つに分かれています。

 

ここで,成長の度合いについて両者を比較すると,

中心はほとんど成長が止まっている一方,外側は大きくなるためにまだまだ成長過程です。

何が変わってくるのかというと,

それぞれの部分を流れる水分量に差ができる

ということです。

 

具体的に言うと,伐採される前,

・成長の少ない中心部には水があまり流れておらず,

・成長過程の外側では水が多く使用されるため,水分量が多い

ということです。

伐採後,木材として利用されるために木は乾燥させられるのですが,当然水分量の多い外側の方がより乾燥速度が速く,水分の少ない内側は比較的乾燥速度が遅くなります。

【乾燥速度の比較まとめ】

外側:水分多め=乾燥速度が比較的速い

内側:水分少なめ=乾燥速度が比較的遅い

 

乾燥が始まると,木の細胞が収縮を開始しますが,ここでひび割れが発生します。

なぜかと言うと,

より収縮する外側と,収縮幅が小さい内側が同じタイミングで収縮を開始するため,外側が収縮ペースを合わせられず,外側にピシッとひび割れができてしまいます。

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 我々がよく見る木材に入っているひびも,このような経緯を経て割れています。

ただし,このひび,全ての木材に現れるとは限りません

次章では,乾燥によるひびのできるものとできないものの違いを見ていきましょう。

 

3.割れる木材,割れない木材

前の章で説明した木に乾燥によるひび割れが起きる現象,実は前提条件があるんです。

それは,

細胞壁が強いこと】

 

細胞壁というのは,植物にだけ存在する構成部分のことです。

細胞の最も外部に存在し,

・植物の形状を保持する

・侵入物の選択

といった役割を担っており,今回話に出てくるのは一つ目の例に挙げた

「植物の形状を保持する」

役割です。

実は同じ種の木でも,細胞壁の強弱には個体差が存在します。強いものはより形状を保持できるということです。

 

なぜ細胞壁の強弱がひび割れに関係するのかというと,

「強いと白太が元の形を保持したまま収縮して最後にはひび割れができるが,弱いとひびができるまでに木材自体の変形が起きる」からです。

 

曲がっている木材とまっすぐな木材の違いというのは,最後には細胞(壁)がいかに形を保持できるかどうか,に行きつきます。

曲がった木材というのは,力学的構造としてはやはり真っ直ぐなものより弱いですし,仮に製材して真っ直ぐな形となるように加工しても,曲がりやすい(細胞が変形しやすい)ので後々建築物に支障をきたす可能性は高まります。

 

つまり,それぞれの因果関係としては,

・強い細胞壁を持つ木→ひびができる

・弱い細胞壁を持つ木→ひびができる前に曲がるなど変形が起きる

ということが言えます。

 

4.ひび割れ木材は弱いか?

前章までの話で,比較的細胞壁の強い木材は,乾燥によるひび割れが生じることを説明しました。この章では,

・強度の高い木材とは?

・ひび割れ木材は弱いか?

ということをいよいよ見ていきたいと思います。

 

木材の強度は何で決定しているのかというと,力のかけ方によって概ね3つに分類されています。

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①圧縮,引っ張り:縦方向にかける力

②曲げ:横向きの木材にかける力

③せん断:木材の一部分にかける力

です。

今回調べた限りではせん断に関する情報は無かったので,

①②についてみていきたいと思います。

 

【①圧縮,引っ張り:縦方向にかける力】

ひび割れありとなしのもの(人工的にひびを入れたものを対照実験のため使用している)を比較してみると,両者の強度にそれほど違いはなく,むしろひびの入っている方が強いということが分かります。強度に違いのない理由は,

【木材中で細胞がどう並んでいるか】

で説明できます。

 

木の内部は縦にいくつかの細胞が連なって出来ており,簡単なイメージとしてはたくさんのストローが寄り集まってできたものが木の形となっている感じです。

このような構造となっているので,少しくらいひびがあっても縦方向に圧収縮してもさほど影響が出ないのです。

                         

【②曲げ:横向き向きの木材にかける力】f:id:youmaniwa:20180522183132p:plain

                         [荒武志朗 1996]

干割れのあるものとないものを比較した時,より構造的に強いのはひびがある方,それも,ひびが大きければ大きいほど「曲げ」に対する強度は強いということが分かっています。

理由は3章でも説明したように,干割れのできる木材は細胞(壁)が強いためです。

それも,この実験結果より分かることはひびの大きさと強度には正の相関があるということです。

 

以上述べたように,実験結果よりひび割れのある木材は構造的にはひび割れのないものと比較して,総合的には強度が強いということが言えるのです。

 

今回調べていて面白かったのは,見た目で判断するとイメージ的には弱そうな干割れ木材ですが,実はひびのない木材より強いということ。見かけではわからないものですね。

 

次回予告

次回のブログは牧さんです。

ゆーまにわ内で家喜がいじられキャラとなる要因を作った一人です。 

調理技術高すぎてびびります。